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雨の夜

夕飯の支度している頃から雨が降り始めた


会社の健康診断でバリュウムを飲んだせいだ

胃と背中がとても痛い

下剤も効き過ぎ


ピロリ菌の検査が陰性なので

最近は胃のバリュウム検査はパスしていたが

夏の終わり頃から胃痙攣を何度か繰り返しているので飲んできた


友人には引っ掛かったらどうせ胃カメラに回されるんだから

最初から胃カメラ飲んじゃいなよ!と、言われるが

胃カメラは胃カメラで最悪の思い出があるので嫌なのだ・・・


寝る頃には雨は本格的になってきた。




雨が気になって襖を開け和室の窓から庭の様子を見てみる。


ああ、私は夢を見ているんだ。

そこは数年前に実家仕舞いをして取り壊してしまった

私たちが住んでいた家だ。


胃と背中が痛い。


私は空っぽの父の布団に潜り込んで丸まって寝た

ふっと暖かさを感じ目を開けると

母が背中をさすってくれている


母は、ニコニコ笑いながら

「あったかくて気持ちいいでしょう」と、さすっている


母の手は、私たちの誰よりも暖かいのだ

冬の寒い日に、みんなで手を握り合いっこをしても

母の手だけはダントツで暖かかった。

「おばあちゃんも暖かかった」と母はいつも言っていた。


母は私の手を握って

「お母さんがいなくても、お母さんに話していいのよ」と言った。


あまりにも母の顔が鮮明で、あまりも母の手が暖かくて

私は、「ああ、これはお迎えだな。母が私を迎えにきたんだ。」と思った。


私がいなくなった後、息子たちが困らないようにと

少しずつ準備はしているが

「サブスク関係のパスワードや引き落とし関係がまだだ!」

と、思ったところで

夫が朝のコーヒーを淹れるため

台所でガチャガチャと立てた音で目が覚めた。


夢だ。

びっくりしたことに、私は夢を見ながら泣いていた

ベットから出ても涙が止まらない


夏に行ったインドネシア旅行で有給休暇を使ってしまったので

多少のことでは仕事を休みたくないのだけれど

今日は休んだ方がいいなと思った。


会社にメールをして

お茶を飲んで、

カメラを持って雨上がりの近所の公園の入り口まで行って引き返してきた


雨上がりの外はキラキラしていた

落ち葉だらけになった道を

上の階の、おばあちゃんが犬と散歩をしていた

朝のお日様が暖かかった


いつか私の手も、お母さんやおばあちゃんの様に

暖かくなる日が来るだろうか。









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